荒物商の中村洋輔は四、五年前、
東京都南多摩郡浅川村の酒屋に奉公したさい、
迷い込んだ虎斑の大猫を殺害。

以来殺した猫の死骸がありありと見えるようになり、
障子に映る影をみても「猫が、猫が」と口走るようになる。

ついには妻をみて「この黒猫め!」と切りかかり、
様子を見に来た妻の妹にも切りかかり指三本を切り落とす。

悲鳴を聞いた実の兄によってなんとか取り押さえられ、
親戚付添いの上で小石川の病院へ入院させられたという。



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