魔性の動物…「猫」の秘密 |
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猫の妖怪 昔々…夜の闇が今よりもずっと暗く深かった時代、そこには限りなく静寂に包まれた異界の空間がありました。 今では決して感じる事の出来ない『気配』のようなもの・・・その中で人々は何を畏れ、何を猫達に見たのでしょうか? 猫の妖怪日本編 ・・・日本各地に伝わる猫の妖怪を紹介します。 猫の妖怪海外編 ・・・世界各地に伝わる猫の妖怪を紹介します。 猫の妖怪日本編 ◆猫股◆ ねこまた 尻尾の先が二股に分かれ、蛇のように気味悪くうねる。 さまざまな妖しい振舞をするとして恐れられた。 先端がさすまた状になっているものと、根元からしっかり分かれて生えているものがいる。 人の言葉を理解し話す事が出来き、さらに三味線を弾くこともある。 人を食い殺して、その人になり代わることができる。 猫があまりに年を取るとなるといわれる。 一晩に7〜8人を食べたともいわれる。 好物は行燈の油。(魚油) 雌の猫又は男の夢に現れ、精を奪い取って行くといわれている。 人間の女性に化ける事が出来る。(老婆が多い。) 山奥に住み、目は猫の如く、形は大きい犬のようである。 一見ただの猫のようにしか見えない場合もあるが、犬をけしかけると正体を現す。 年老いた黄色か黒の雄猫が多い。 ◆化猫◆ ばけねこ 怪異をなす猫のことで、古文献や民間伝承に多く見られる。 理由もなく猫を殺すと化けて出るので古猫とは限らないが、 年を経た猫の方が確率は高いといわれる。 化け猫のなす怪異は様々で、人に変化する、手拭いを被って踊る、言葉をしゃべる、 山に潜み、狼を従えて旅人を襲う、祟りを及ぼす、死体を操る、人に憑くなど。 ◆山猫◆ やまねこ 宮城県牡鹿郡網地島、島根県大田市、隠岐群、東京都八丈島などでいう猫の怪異。 島根県隠岐郡では猫が一貫匁(約3.75キロ)以上になると、山猫となってさまざまな怪異を起こすといわれている。山中で歌を歌ったり、木を伐る音をたてたり、河童のように相撲を取ることもある。 八丈島でいう山猫は、胴は太くて足は短く、尾はとても長く頭から尾先まで五尺(約1.5メートル)もあったという。昼夜を問わず人家を覗いてまわり、食べものや子供をくわえていったそうである。 宮城県牡鹿郡網地島の山猫は、歌を歌ったり貧相な男に化けて相撲をとったりした。 紳士に化け、木の葉のお金を使うなど人を騙すのが巧み。 ◆大山猫◆ おおやまねこ 福島県から岐阜県の山中に住む化け猫。猫股の十倍ほどもある大きさ。 老婆に化け釣り人を食い殺したり、釣り上げた魚を奪いに来たりしたという。 雄と雌がいるらしい。 ◆火車◆ かしゃ 全国に生息し、暗雲と共に葬式の式場や墓場で死体を奪う妖怪。 猫が年月を経ると火車になるとの説。 もともとは「火の車」という、火焔を発しながら空を飛び死体を奪う妖怪と 「死体と猫の俗信」、さらに「中国由来の魍魎」が結びついて生まれた妖怪と考えられる。 ◆化猫遊女◆ ばけねこゆうじょ 江戸は品川の色町 品川宿のある美しい遊女と床に入った客が夜中に目を覚ますと、遊女が恐ろしい老猫に化け、魚(または人間の赤ん坊)を頭から丸かじりにしていたという。 ◆猫南瓜◆ ねこかぼちゃ 和歌山県西大牟婁群に伝わる猫の怪異。 ある者が猫をいじめ殺して埋めたら、その猫の口から南瓜が生えてきた。猫を殺した人物はその南瓜を食べて死んでしまったという。猫が復讐する為に南瓜をはやしたのだという。 神奈川県横須賀市浦賀では、南瓜ではなくキュウリがなったという話である。 ◆猫行者◆ ねこぎょうじゃ 東京西多摩に住んでいた異形の怪人物。 「猫魔大神」という化け猫が崇拝する神を崇拝、 臼をゴロゴロと回しながら呪文を唱え呪術をかけていたという。 多くの猫を引き連れて暮らしていた謎の行者。 ◆鞍掛け猫◆ くらかけみや 鹿児島県大島郡沖永部島でいう猫の怪異。 夜中に鳴く猫を鞍掛け猫といって恐れた。 ◆五徳猫◆ ごとくねこ 火鉢や囲炉裏端に寝そべっていて、人の気配がなくなると自分で五徳に 火を起こすといわれる老猫の妖怪。秋田、山形など羽後地方にいると云われる。 尻尾が二股に分かれているので猫又の一種か? 付喪神(年を経た器物が精霊を宿して化けたもの)にも、同じような容姿をしているものがいるが、付喪神のほうは三つ目という違いがある。 ◆猫神◆ ねこがみ 宮城県伊具群、岡山県備前地方でいう妖怪。 どのようなものかは不明。 ◆猫がめ◆ ねこがめ 大分県地方でいう猫神のこと。 ◆マドウクシャ◆ 愛知県知多郡日間賀島でいう妖怪。「火車」の一種。 100歳以上も年を経た猫で、死体を取りに来る。 「魔道来者」・「魔道火車」が語源か?。 ◆ヒッパリドン◆ 三宅島坪田でいう猫の怪。 「人を化かし引っ張り込む」が語源か? ◆孫太郎婆◆ まごたろうばばあ 静岡県富士群でいう妖怪。 甲州の商人が富士の裾野の遠つ原にさしかかったところ、 山犬に追われて木に登るはめになった。 すると山犬は梯子状態となり、その梯子を孫太郎婆と呼ばれる虎猫が昇って来た。 商人は木の上に有った熊の巣をつついて熊を落とし、山犬がそれを 追っているうちに夜が明けたので、難を逃れる事が出来たという。 ◆新屋の婆◆ にいやのばばあ 広島県山県郡千代田町冠山の麗でいう妖怪。 昔、石見の飛脚が冠山の麗で猫の群れに襲われ、樹の上に逃げた。 すると六匹の猫が梯子状態となったが、一匹分たりなかった。 そこに新屋の婆が現れ、スルスルと一番上に上がって行った。 飛脚が刀で猫の手を切り落とすと、婆や猫達は逃げて行った。 その後飛脚が新屋という宿屋に行くと、そこの婆が手を怪我して寝ているという。 そこで婆を斬りつけると、婆は猫の姿になった。 この怪猫は本物の婆を食い殺してから化けていたという。 ◆庄屋の婆◆ しょうやのばばあ 隠岐郡隠岐の島町に伝わる山猫の妖怪 袖無羽織を着た真っ白な大猫。山猫達の駕籠に乗って現れる。 庄屋の本物の婆を食い殺して、化けていたという。 ◆カブソ◆ 石川県鹿島郡に伝わる、水の中に住む妖怪。 子猫の姿をしていて、尾の先の方が太くなっている。 美女に化けたり、人に幻覚を見せたりする。 また、人の言葉を話す時もある。 ◆マブイクッピ◆ 薩南諸島鬼界島でいう猫の怪異。 夜中に変な声で鳴く猫があると、近く死人があるといって気味悪がられた。 マブイは霊魂、クッピはくくるの意味。 ◆ムネンコ◆ 飛騨国大野郡丹生川村でいう、猫が引き起こす怪異。 猫が死人を跨ぎ超えると、ムネンコが乗り移り死人が動き出すという。 ◆コロケ猫◆ 上州でいう、年を経て神通力を持った猫。 ◆小池婆◆ 島根県松江市の武家で家来を襲い、傷を負うと主人の母親を食い殺し、彼女になりすましたという。 ◆チマ◆ 香川県長尾町多和の谷の奥、ツツジの所で踊っているという三毛猫の怪異 ◆墓猫◆ はかねこ 奈良では墓場・墓参りの道で転ぶと仏の怒りにあい、人が墓猫という怪物になる。 ◆髪結び猫◆ かみむすびねこ 亀岡市の墓場に現れる、髪の長い女に変身する化け猫。 ◆山吹猫◆ やまぶきねこ 駿府城内の庭に潜み、まれに目撃されるといわれる怪しい老猫。 目撃すると瘧(熱病)を患うという。 ◆出世猫◆ しゅっせねこ 駿府城内の庭に潜み、まれに目撃されるといわれる怪しい老猫。 目撃すると立身出世の望みが叶うという、幸福をもたらす黒猫。 ◆猫鬼◆ ねこおに 福島県いわき市好間町の一部地域では、猫鬼と呼ばれる角を持つ幻獣の言い伝えがあり、他に鶏鬼・狐鬼・熊鬼と共に頭蓋骨やミイラ等が残されている…。 昭和30年頃までは猫鬼伝説等を調査する『猫鬼研究会』という組織があり、旧平市の公民館等で見世物を主催していたらしい。 猫鬼には下から野鬼・幽鬼・空鬼・天鬼の階級があると云われる。 野鬼…角が一本・特別な能力は無。 その頭領は代々『アメノカツブシノミコト』を襲名。 幽気…角が二本・人語を解し化けることが出来る。 その頭領は代々『アメノマタタビノミコト』を襲名。 空鬼…角が三本・人語、動植物語を解し、化けるに加え地水火風を自由に操る。 その頭領は代々『アメノシャミネンノミコト』を襲名。 天鬼…角は無く普通の猫と区別ができない。神の様な存在で、通常は姿を見せない。 その頭領は代々『ネコテラスオオミカミ』を襲名。人に害を加える事は無い。 身分は死ぬまで変わらないと云われるが、修行を積むことにより天鬼になれる。 天鬼になることで角は自然に落ちると云われ、猫鬼達は日夜修行に努めていると云う。 猫の妖怪Topへ戻る 猫の妖怪海外編 ◆猫鬼◆猫鬼神◆ びょうき・びょうきしん 年を経た山猫の精を蠱毒に変化させたもの。憑き物の一種。 (蠱毒は人に呪いをかける時に使われる、人為的に作られた 動物や虫の霊のこと。) 強盗や殺人をさせたり、人に憑かせて病気にさせることもできた。 この猫鬼をつかう術は、もともとは中国の邪法だが日本でも知られている。 ◆緑郎◆紅娘◆ 緑郎は男の猫鬼、紅娘は女の猫鬼。 中国広東省の広州全域に出現しては、未婚の男女に取り憑き命を奪った。 緑朗が女に、紅娘が男に取り憑いた場合はすぐに特別な儀式をすれば助かる場合もある。 しかし緑男が男に、紅娘が女に取り憑くと絶対に助からないという。 ◆猫しょう◆ びょうしょう 宋の国の娘に憑いたという、姿の見えない猫の妖異。(『しょう』とは山鬼の精) ◆金花猫◆ きんかびょう 中国浙江の金華地方にいるという妖猫。人に飼われて、早三年で妖化する。 屋上に昇って月日を仰ぎ、その精を吸って怪異をなす猫。 相手によって美男美女に化けるという。 黄猫(日本でいう赤虎毛)が最も化ける確率が高いという。猫鬼の一種。 ◆三脚猫◆ さんきゃくびょう 足が三脚しかないという怪猫。 1846年の夏から秋にかけて、中国浙江地方で噂が広まる。 夕方一陣の生臭い風が吹き寄せると、人家に侵入し人を化かし災いをなすという。 銅鑼をけたたましく打ち鳴らすことにより、退散させることができる。 ◆翼のある猫◆ 主に海外で目撃例のある翼の生えた大きな黒猫。 ノースウェールズ・ポントサイシルトの学校の上空での目撃例(1905発行のイギリスの天文雑誌より)の他、サマースタウンでは、捕獲されたという。(1933 6/9 ザ・デイリー・ミラー誌より)さらに1966には、オンタリオ州で同様の物を撃ち落とし、検証した記事も残されている。 ◆オヴィンニク◆ ロシア、スラブの国々において、穀物庫に住んでいるとされる精霊の一種。 全身毛むくじゃらで黒い猫の姿をしていると云われる。 吠えると犬のようで、眼は燃えるようにギラギラと赤く輝く。 ◆ケット・シー◆ イギリススコットランド高地地方に住む猫の妖精の一種。 黒に近い深緑色をした大きな猫の姿をしており、 長い耳を持ち、胸に妖精の印である白い部分がある。 人間と話す事や、二足歩行ができる。 猫を虐待する人間がいると懲らしめたりする。 ◆バール◆ ソロモン王が書いたとされる「レメゲトン」に挙げられている72人の悪魔の一人。 中世のヨーロッパで、悪魔の中でも代表的なものと考えられるようになり、 猫とヒキガエルと人間の頭を持つ姿で出現すると云われた。 ◆バステト◆ 猫の頭を持つ半人半獣の古代エジプトの女神。 ブバスティス市の守り神。 愛と豊穣と官能の女神で、母性の象徴として描かれたりミイラの副葬品としても有名。 ◆ワンパス・キャット◆ クーガーと人間の女を合わせたような姿をしている巨大な猫。 アメリカ・テネシー州東部の森の中をうろついているという。 もともとは先住民の美しい女だった。 猫の妖怪Topへ戻る 参考文献 鈴木棠三(1947)『日本俗信辞典 動・植物編』角川書店』 永野忠一(1971)『猫の幻想と民俗-民俗学的私考-』習俗同攻会 小野忠孝・土橋里木(1974)『日本の民話8 上州・甲斐編』未来社 澤田瑞穂(1984)『中国の呪法』平河出版社 平岩米吉(1985)『猫の歴史と奇話』池田書店 谷川健一(1987)『日本の妖怪』平凡社 多田克己(1990)『幻想世界の住人たちW日本編』新紀元社 笹間良彦(1996)『図説 世界未確認生物辞典』柏書房 野間佐和子(1996)『中国妖怪人物辞典』講談社 草野巧(1997)『幻想動物辞典』新紀元社 村上健司(2000)『妖怪事典』毎日新聞社 山口敏太郎(2002)『江戸武蔵野妖怪図鑑』けやき出版 氏家幹人(2005)『江戸の怪奇譚』講談社 人文社編集部(2005)『江戸諸国百物語 東日本編』人文社 人文社編集部(2005)『江戸諸国百物語 西日本編』人文社 宮本幸枝・熊谷あづさ(2007)『日本の妖怪の謎と不思議』GAKKEN 一柳廣孝(2008)『知っておきたい世界の幽霊・妖怪・都市伝説』西東社 志村有弘(2008)『図説 地図とあらすじで読む日本の妖怪伝説』青春出版社 ブレンダ・ローゼン(2009)『妖怪バイブル』ガイアブックス 湯本豪一(2016)『日本の幻獣図譜-大江戸不思議生物出現録』東京美術 猫の妖怪Topへ戻る |
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