猫奇伝
    魔性の動物…「猫」の秘密
  
     
   可愛いだけが
  猫じゃニャィ!
















Ding,Dong,Bell   ディンドン、鐘が鳴る   マザーグース
ディンドン、鐘が鳴る
ネコちゃん井戸の中
誰がそんな事したの?
やせっぽちのトミー・シン
誰がネコちゃん引っ張り上げた?
おでぶのジョニー・スタウト
なんて悪い子なんでしょ
ネコちゃんを溺れさせようとするなんて
誰にも悪さをしなかったのに
納屋の鼠をみんな獲ってくれたのに


Mother Cat   ママネコ   マザーグース
ママネコがいたけれど
毛糸の玉を食べてしまった
子ネコが生まれたけれど
小ネコ達みんなセーター着てた


As I Was Going to St Ives   セント・アイヴスへ行くとちゅう  マザーグース
セント・アイヴスへ行くとちゅう
7人の奥さんつれた男に出会った
奥さんそれぞれ袋を七つ
袋にはそれぞれネコが7匹
子ネコに、ネコに、袋に、奥さん、
セント・アイヴスへ行ったの全部で何人だ?


Six LittLe Mice   6匹のちっちゃな鼠  マザーグース
6匹のちっちゃな鼠達、座って糸をつむいでた
ネコが通りかかって、のぞきこみ
「おや、みなさん、何をやってらっしゃるの?」
…紳士方のために、みんなで服を織っています。
「中へ入って、手伝ってあげましょうか、糸きりを?」
…いえ、いえ、ネコのおばあさん、
あたしたちの首を噛み切るつもりでしょ。
「とんでもない、そんなことするものですか。
糸つむぎの手伝いをしたいだけ」
…それはそうでも、中へは入れてあげられない。


I Love Little Pussy  子ネコちゃん大好き    マザーグース
子ネコちゃん大好き
子ネコの毛皮はとってもあたたか
私が子ネコをいじめなければ
子ネコも私を引っ掻かない
だから尻尾は引っぱらないし
追っ払ったりも私はしない
子ネコちゃんと私
いい子で遊ぶ
私のそばにすわらせて
私は子ネコにごちそうあげる
だから子ネコも私が大好き
だって私は優しいお嬢さん


Pussy Cat, Pussy Cat  ネコちゃん、ネコちゃん    マザーグース
ネコちゃん、ネコちゃん、どこ行って来たの?
ちょっとロンドンまで、女王様にお会いしに
ネコちゃん、ネコちゃん、どやって行ったの?
そりゃもう!車に乗って雪道すいすい
ネコちゃん、ネコちゃん、向こうで何をしてきたの?
そりゃもう!子鼠脅してやったの、女王様の椅子の下
ネコちゃん、ネコちゃん、女王様のおもてなしは?
そりゃもう!鼠のパイにゆで鼠、それにおいしいスグリのワイン



Three Little Kittens  三匹の小ネコ達    マザーグース
三匹の小ネコ達
手袋なくして泣きだした
「ねえねえ、お母さん あたしたちどうしよう
手袋なくしてしまったみたい」
「なあに!なくしたですって、手袋を
本当にしょうのない子たちねえ!
それじゃパイはあげられません」
ミャウ ミャウ ミャーウ
「だめだめ、パイはあげません」

三匹の小ネコ達 手袋見つけて大騒ぎ
「ねえねえ、お母さん ほうら見て、見て
見つけたのよ、手袋を」
「はめておしまい、手袋を
ほんとうにしょうのない子たちねえ!
それじゃパイをあげましょう」
ゴロゴロ、ゴロゴロ、ゴロニャーン
「ちょうだい、ちょうだい、パイをちょうだい」

三匹の子ネコ達
手袋はめてたちまちパイを食べ終わり
「ねえねえ、お母さん
あたしたちどうしましょう
手袋汚してしまったみたい」
「なあに!汚したですって、手袋を
ほんとにしょうのない子たちねえ!」
三匹みんなでため息ついた
ミャウ ミャウ ミャーウ
三匹みんなでため息ついた

三匹のネコたち
手袋洗って乾かした
「ねえねえ、お母さん
聞いて、聞いて
みんなで手袋洗ったの」
「なあに、洗ったですって、手袋を
それはほんとにいい子ねえ
でも鼠の匂いがするわ、どこか近くに」
「ほんと、鼠の匂いがするわね、どこか近くに」


Two Little Kittens  二匹の子ネコ  作者不明
二匹の子ネコ、嵐の晩に言い争い
そのうち取っ組み合いの大げんか
鼠を持っているか持っていないが
けんかのはじまり

「その鼠、おれによこせ」と大きい子ネコ
「この鼠がほしいって?じゃ取ってみろ!」
「どうしったて取ってみせるぞ」と兄さん子ネコ
「ぜったいくれてやるものか」と小さい子ネコ

それは嵐の夜だった
二匹の子ネコが喧嘩をはじめたのは
この家のおばあさん、ほうきをつかむと
二匹の子ネコを追い出した
外は霜と雪とでまっ白け
でも小ネコたち、どこへも行くあてがない
玄関マットの上にうずくまってた
おばあさんが床の掃除を終えるまで

それからこっそりしのびこんだ、鼠みたいにこっそりと
雪でびしょぬれ、氷のように冷たくなって
だってこんな嵐の晩、喧嘩なんかしてるより
うちで眠ってるほうがよかったから


There Was an Old Lady  マザーグース
おばあさんがいたけど、ハエをのみこんじまった
どうしてハエなんかのみこんだのか、わからない
ひょっとすると死んでしまうかも

おばあさんがいたけど、くもをのみこんじまった
おなかの中でクモはガサガサ、ゴソゴソ、
くすぐったいたらありゃしない
ハエをつかまえようと、クモをのんだんだ
どうしてハエなんかのみこんだのか、わからない
ひょっとすると死んでしまうかも

おばあさんがいたけど、小鳥をのみこんじまった
ほんとにばかみたい!小鳥をのみこんじまったんだ
クモをつかまえようと、小鳥をのんだんだ
ハエをつかまえようと、クモをのんだんだ
どうしてハエなんかのみこんだのか、わからない
ひょっとすると死んでしまうかも

おばあさんがいたけど、ネコをのみこんじまった
ほんと、うそみたい!ネコをのみこんじまったんだ
小鳥をつかまえようと、ネコをのんだんだ
クモをつかまえようと、小鳥をのんだんだ
ハエをつかまえようと、クモをのんだんだ
どうしてハエなんかのみこんだのか、わからない
これじゃ死んでしまうかも

おばあさんがいたけど、イヌをのみこんじまった
頭から尻尾まで、丸ごとイヌをのみこんじまったんだ
ネコをつかまえようと、イヌをのんだんだ
小鳥をつかまえようと、ネコをのんだんだ
クモをつかまえようと、小鳥をのんだんだ
ハエをつかまえようと、クモをのんだんだ
どうしてハエなんかのみこんだのか、わからない
ひょっとすると死んでしまうかも

おばあさんがいたけど、ウシをのみこんじまった
どうしてウシなんかのんじまったのか、わからない
イヌをつかまえようと、ウシをのんだんだ
ネコをつかまえようと、イヌをのんだんだ
小鳥をつかまえようと、ネコをのんだんだ
クモをつかまえようと、小鳥をのんだんだ
ハエをつかまえようと、クモをのんだんだ
どうしてハエなんかのみこんだのか、わからない
ひょっとすると死んでしまうかも

おばあさんがいたけど、ウマをのみこんじまった
そしてもちろん死んじまった


The Droll Tale of the Old Woman Who Bought a Pig
  豚を買ったおばあさんのおかしな話  マザーグース
おばあさん市場へ行って、ブタ買った
ブタには4本 足があったが
ブタはどうしても動かない
困ったね、どうしたもんだろ、とおばあさん

少し先まで行ってイヌに声かけた
イヌや、イヌや、ブタにかみついとくれ
ブタがどうしても歩かない
もう2時間も前に帰ってられたのに…
でもイヌはいやだと言ってかみつかない

少し先まで行って棒に声かけた
棒や、棒や、イヌをたたいとくれ
イヌがブタをかんでくれない
ブタはどうしても歩かない
もう2時間も前に帰ってられたのに…
でも棒はいやだと言ってたたかない

少し先まで行って火に声かけた
火や、火や、棒をもやしとくれ
棒がイヌをたたいてくれない
イヌはブタをかんでくれない
ブタはどうしても歩かない
もう2時間も前に帰ってられたのに…
でも火はいやだと言ってもやさない

少し先まで行って水に声かけた
水や、水や、火を消しとくれ
火が棒を燃やしてくれない
棒はイヌをたたいてくれない
イヌはブタをかんでくれない
ブタはどうしても歩かない
もう2時間も前に帰ってられたのに…
でも水はいやだと言って消してくれない

少し先まで行っ雄牛に声かけた
ウシや、ウシや、水飲んどくれ
水が火を消してくれない
火は棒を燃やしてくれない
棒はイヌをたたいてくれない
イヌはブタをかんでくれない
ブタはどうしても歩かない
もう2時間も前に帰ってられたのに…
でもウシはいやだと言って飲んでくれない

少し先まで行って肉屋に声かけた
肉屋さん、肉屋さん、ウシを殺しておくれ
ウシが水を飲んでくれない
水は火を消してくれない
火は棒を燃やしてくれない
棒はイヌをたたいてくれない
イヌはブタをかんでくれない
ブタはどうしても歩かない
もう2時間も前に帰ってられたのに…
でも肉屋はいやだと言って殺してくれない

少し先まで行って縄に声かけた
縄や、縄や、肉屋をつるしておくれ
肉屋がウシを殺してくれない
ウシは水を飲んでくれない
水は火を消してくれない
火は棒を燃やしてくれない
棒はイヌをたたいてくれない
イヌはブタをかんでくれない
ブタはどうしても歩かない
もう2時間も前に帰ってられたのに…
でも縄はいやだと言ってつるしてくれない

少し先まで行ってネズミに声かけた
ネズミや、ネズミや、縄をかじっとくれ
縄が肉屋をつるしてくれない
肉屋はウシを殺してくれない
ウシは水を飲んでくれない
水は火を消してくれない
火は棒を燃やしてくれない
棒はイヌをたたいてくれない
イヌはブタをかんでくれない
ブタはどうしても歩かない
もう2時間も前に帰ってられたのに…
でもネズミはいやだと言ってかじってくれない

少し先まで行ってネコに声かけた
ネコや、ネコや、ネズミを殺しとくれ
ネズミが縄をかじってくれない
縄は肉屋をつるしてくれない
肉屋はウシを殺してくれない
ウシは水を飲んでくれない
水は火を消してくれない
火は棒を燃やしてくれない
棒はイヌをたたいてくれない
イヌはブタをかんでくれない
ブタはどうしても歩かない
もう2時間も前に帰ってられたのに…

するとネコはネズミを殺しはじめ
ネズミは縄をかじりはじめ
縄は肉屋をつるしはじめ
肉屋はウシを殺しはじめ
ウシは水を飲みはじめ
水は火を消しはじめ
火は棒をもやしはじめ
イヌはブタをかみはじめ
ブタはようやく歩きはじめた
これですっかりかたづいて、
やっとおばあさん家へ帰った


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河野一郎(1998)『対訳 英米童謡集』岩波文庫