猫奇伝
    魔性の動物…「猫」の秘密
  
     
   可愛いだけが
  猫じゃニャィ!















遊戯唄・・・手玉唄


兵庫
ひいふの姉さん、
お共がないとてあなずりなさる、
殿は丹波の助一さんの、
助の土産になになにもろた、
一に京箱、二に白粉箱、
三にお盆、四つめの枕、
あげていちばかたびら、
肩と裾とは梅の折枝、
そこは御殿の袖端し、
そではしとは、どこで打たれた、
それはお茶屋の、娘に打たれた、
お茶屋の娘は器量がよいとて、
とんと豆腐屋に、 豆腐が売れずに、
きらず(おから)ばっかり、よう売れて、
きらず買(こ)てきて、棚に置いたら、
猫がちょいと来てひっかけた、
猫を追おとて石につまずいて、すってんとん。


宮城
一つ……(不明)
二つふくれんぼ、 ふくれたところがだんよりだんより。
三つかんこ、 すっぱいところが、だんよりだんより。
四つようかんこ、 甘いところがだんよりだんより。
五つ医者様お薬箱、 だんよりだんより。
六つ娘さん白粉つけて、 だんよりだんより。
七つ納豆箱、 糸がたつのがだんよりだんより。
八つ山猫ごろにゃんごろにゃん、 だんよりだんより。
九つこぞこ、 味噌するのがだんよりだんより。
十で殿さまおえらいところが だんよりだんより。


岩手
一つひとびと船漕ぎだんより、 だんよりだんよりだんよりで。
二つふみよさんのお顔が、 だんよりだんよりだんよりで。
三つ味噌だま、かぶれ味噌、 だんよりだんよりだんよりで。
四つ吉原のお客が、 だんよりだんよりだんよりで。
五つ医者どの、薬箱、 だんよりだんよりだんよりで。
六つ麦飯とろろめし、 だんよりだんよりだんよりで。
七つ納豆売り、糸きり、 だんよりだんよりだんよりで。
八つ山猫ぎろりぎろり、 だんよりだんよりだんよりで。
九つ子供らがこれすき、 だんよりだんよりだんよりで。
十で殿さま、刀をぬいて、
すっぽんすっぽんすっぽんぽん。


岩手
一つ人びと、お一人お顔たより、 ありゃりゃん、こりゃりゃん。
二つ船人、お舟をたより、 ありゃりゃん、こりゃりゃん。
三つ味噌さんが味噌すりたより、 ありゃりゃん、こりゃりゃん。
四つ吉原お客さまたより、 ありゃりゃん、こりゃりゃん。
五つ医者さま、薬箱たより、 ありゃりゃん、こりゃりゃん。
六つ麦飯とろろめしたより、 ありゃりゃん、こりゃりゃん。
七つ納豆屋さんが糸引きたより、 ありゃりゃん、こりゃりゃん。
八つ山猫、大きな目をたより、ありゃりゃん、こりゃりゃん。
九つ子供がこれしきたより、 ありゃりゃん、こりゃりゃん。
十で殿さまお馬がたより、 ありゃりゃん、こりゃりゃん。




遊戯唄・・・雑謡  


富山
人の真似こまね、猫の糞くさい。


長野
けぶ岳いけ、 ちんと猫こっち来い。


長野
ちゅうちゅう鼠の棚探し、
猫に追われて、恥かいた、
つんとこつんとこ、つんぬけそんまいに。


石川
東京の坊ちゃん、だら坊ちゃん、
屋根の上にねんねして、
鼠にお臍かじられた、
猫のおかげで助かった。


福井
猫の子この子、名はおしず、
おしずやおしず、静かに行って鼠とれ。


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北原白秋(1975)『日本伝承童謡集成〈第三巻〉遊戯唄編(上)』三省堂
北原白秋(1975)『日本伝承童謡集成〈第四巻〉遊戯唄編(中)』三省堂